「社会参加賞」を受賞

 国際高齢者年を記念して、総務庁の主催で開催された
「心豊かな長寿社会を考える国民の集い」で、「うんとふる
さと市」が社会参加賞を受賞し、式典では、太田国務大臣
より青木菊栄さんに直接賞状と記念品の楯が手渡されま
した。
 この「市」は、地元の高齢者有志が生き甲斐活動と地域
の活性化を目指し発足した会で、新鮮野菜を安く提供した
り、特別老人ホームなどに野菜を寄付するなど福祉活動
を展開していることが評価されました。
東京厚生年金会館大ホールにて
東京厚生年金会館大ホール
1999-10-1

 

あまった自家用野菜の有効活用に「市」を闘催

 新潟県塩沢町にある雲洞庵は曹洞宗四大道場の一つ。年間10万人もの参拝客が訪れます。
その名刹のある同じ地区で「うんとふるさと市」が始まったのは平成6年のことでした。
 現役は引退しても、自家用に野菜を作っている地域の老体有志11人で始めました。自家用と
いっても最盛期には食べきれずに捨ててしまう。これを何とかできないかと始めたのがきっかけ
です」と、発起人代表である青木菊栄さんは話します。
 いろいろとみんなで考えた末、自分たちで食べきれない新鮮野菜を持ち寄り、雲洞庵参道入口
にある集落センター(駐車場)一角を借り、「市」を開くことになりました。
 6月から11月まで毎朝6時から「市」に並ぶのは、ジャガイモ、カボチャ、キユウリ、モロヘイヤ、
枝豆など、採れたばかりの季節の野菜。開設当初は売るものがなくなってしまい、慌てて裏山で
山菜を摘んで店先に並べたこともあったとか。その山菜がまた好評で、今では予約まで入るとい
います。売れ行きのよさが励みとなって、「どうせ作るならもっといい野菜を作ろう」と、JAの生産
指導の方や農業改長普及員から夜に来てもらい、みんなで講習会を聞くほどの熱の入れよう。
「平均年令は70歳ですが、みんな若々しくて、腰の曲がった人は一人もいませんよ」と、青木さん。
その熱意にほだされて、やがて若い人も加わるようになり、今では会員が30人にふくれ上がり、
「市」の前は井戸端会議で毎日賑わっています。秋には地域の人たちへの感謝を込めて「収穫
祭」を実施し餅つきや甘酒、豚汁などを無料で振る舞い、最後は新そばを打ってみんなで食べる
といいます。この収穫祭は、今ではすっかり地城に溶け込んで、なくてはならない恒例の一大行
事になっているそうです。
 このほか、特別養護老人ホームなどの福祉施設に野菜を寄付したり、町の「ポランティア祭」で
の野菜の売上金を寄付したりと、ポランティア活動も積極的に展開しています。
 

わら細工や竹細工を通しまちづくりにも貢献

 青木さんと「市」のメンバーには、もうひとつの「顔」があります。
町の公民館活動の「趣味の会」での、わら細工や竹細工づくりで
す。作品はお祭りなどで販売し、売上金は社会福祉協議会に寄
付しているといいます。なかでも好評なのは、年末に町内の一人
暮らしのお年寄りにしめ縄を2本ずつプレゼントするというもの。
 また、町内の小学校に出かけて、水鉄砲や竹トンボなどの竹
細工を指導、冬には毎年東京から訪れる小学校5・6年生の体験
小学校でのわら細工風景
授業でわら細工を指導するなど、「うんとふるさと市」での活動も含めると、一年中休む暇がないほ
どです。
 そんな青木さんですが、16年前にガンの手術を受げたといいます。以来、「何か世の中のために
なることをしたい」、そんな思いを持ち続けてきました。町内の大きなホテルがわら細工の評判を聞
きつけて、スキ−客の多い冬に来てほしい、との依頼がきても、「お客が町に末ることで、少しでも
活性化につながれば」と、引き受けたといいます。
 このように、「市」のみなさんの地城へ向けた取り組みにより、若い農業者も「市」に参加し、若手
による村おこしの会もでさました。今は、特産の加工品づくりまで話題に上っているそうで、みなさん
の意気込みは、ますます熱くなっています。


「いきいき人生」            
−エイジレス・ライフ、社会参加活動事例、世代間参加活動事例−
協 力:総務庁長官官房 高齢社会対策室
発行者:田 中 英 雄
発行所:第一法規出版株式会社    より